物語の中盤、マコが泣き止んだシーンで、私は号泣した。
涙が止まらなかった。
久しぶりに読む小説を油断していた。
安易に読み始めてしまった。
心の琴線を、こんなにも震わされるなんて。
共存を前提とする社会の仕組みの中で、ありのままの私で表現すること。
その至極シンプルなことが、いつしか少しずつ、それが大人になることかのように、当然のように減り、社会は、安心という場所からそれを居場所として返す。
そして、ありのままの感触、ありのままの表現は、久しく出会わないもの、出会えないもの、になっていく。
誰もが納得するような立派な理由をつけて、場所を選び、表現することで、体現する責任。
オッサン先生とマコが体現している責任は、どうだろう。
この本の全てに作者の声を、言葉を感じた。
でも「これは、わたしの話」と躊躇なく重ねてしまおう。
わたしの中に、マコもオッサン先生もいた。
登場人物の誰しもに、会ったことだってある。
もっとも印象深く大切な小説の一つに今、私は出会えた。
時代が変わる今、社会で活躍できる大人になったみんなに読んで欲しいし、社会で活躍したくない人にも、できてないと感じる人にも読んでほしい。
そして、社会に出たくない人にも読んでほしい。
マコの感受性と素直さが、オッサン先生の正直さが、二人の絆が、久しく出会っていなかったもののありかを教えてくれる。
パパとママのあたたかい眼差しと言葉にはげまされ、本物の優しさと人を育む勇気に、心を支えられる。
わたしの中にあるものに再会させてくれてありがとう。そして、私は、小説家 蟹江杏のファンになった。
岡本沙耶佳(エグゼクティブコーチ/システムコーチ)
あの空の色がほしい
蟹江杏 著
判型 | 単行本 46 |
ページ数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-309-03188-0 |
Cコード | 0093 |
発売日 | 2024.05.30(予定) |
本体価格 | 1,980円(税込) |
出版社 | 河出書房新社 |
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蟹江杏 ANZ KANIE
画家。東京都出身。
「NPO法人3.11こども文庫」理事長。
「自由の森学園」卒業。ロンドンで版画を学ぶ。
美術館、全国の百貨店や画廊で個展を開催。絵本やエッセイなど著書多数。
2022年7月、トヨタ 「MIRAI」(長野トヨタ)のラッピングカーの為に作品を提供。BMW ジャパンのエコカー「i3」のラッピングや、JTA(日本トランスオーシャン航空)のイリオモテヤマネコ・デカール機、洋菓子舖ウエストなど企業とのコラボレーションも多数手がけている。
東日本大震災以降は、被災地の子どもたちに絵本・画材を届ける活動や、福島県相馬市に絵本専門の文庫「にじ文庫」を設立。文部科学省復興教育支援事業のコーディネーターをつとめるなど、全国の子どもたちとアートをつなぐ活動を行なっている。被災地でおこなった子どもたちへの活動は、震災後10年の特番として、NHK BS1スペシャル「10年目の約束~福島の子どもたちが描いた”未来”~」で紹介された。
また、これまでのすべての活動に対し雑誌「pen」クリエーターアワード2021「日本と世界を変えていく、2021年最も輝いた7組」で審査員特別賞を受賞。2023年、絵本「ハナはへびがすき」(福音館書店)が「第14回ようちえん絵本大賞」を受賞。
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